第三分科会

写真提供:岡崎 

タイトル

「アト秒科学の基礎と応用:アト秒レーザーとアト秒電子ビームを例に」



 紹介文


2001年にアト秒レーザーが開発され、人類は物質内の電子の動きを捉えることが出来るようになりました。そして、2023年のノーベル物理学賞がアト秒物理学の実験研究に対して与えられました。本講義では、物質と技術の両面からアト秒科学について解説します。物質の面からは、なぜ電子はアト秒の時間スケールで運動するのか?気相、液相、固相それぞれでどのような現象が観測されたのか?現在のホットトピックは?について解説します。技術の面からは、超短レーザー光、そして私の専門であるアト秒電子ビームの発生方法について解説します。広く浅い講義内容ですので、ご専門分野に関わらず、ご関心がある方は奮ってご参加ください。



講義概要(予定)

A.  導入:なぜ電子はアト秒の時間スケールで動くのか? 

 水素原子・レーザーポインターを例にとって

B.    基礎知識

光の古典・量子力学/電子の古典・量子力学/電子と光の相互作用

  C. 超短パルスレーザー光源

フェムト秒レーザー/パルス圧縮/高次高調波発生/アト秒ストリーク法

D.  超短パルス電子ビーム源

電子顕微鏡の部品/パルス電子ビーム/アト秒電子ビーム

 E. 気相原子・分子内のアト秒ダイナミクス

超閾イオン化/電子系の緩和過程/電荷移動など

 F. 固相・液相のアト秒ダイナミクス

固相と気相の比較/固相・液相からの高次高調波発生/光電効果に要する時間/アト秒吸収分光など

 G. これからのアト秒科学

ペタヘルツ・エレクトロニクス/バレートロニクス/高強度赤外レーザー光源/超高速STM/アト秒ARPES/アト秒電子顕微鏡/レーザーによる電子加速/アト秒自由電子レーザー/生物学・医療への応用など


分科会担当者コメント

担当: 黒田 琉奈(名古屋大学 )

第三分科会では理化学研究所の森本裕也先生にお越しいただき,アト秒科学の基礎から,さらにその応用であるアト秒電子顕微鏡など,アト秒を用いた光技術について講義をして頂きます。

2023年のノーベル物理学賞として選ばれた「アト秒パルス」。皆様も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。1アト秒は100京分の1(10−18)秒という非常に短い時間の単位です。これほど短い時間幅をもつアト秒パルスは,ストロボ写真のように電子の動きを捉える「プローブ」として活躍します。

さらにアト秒パルスは,「電子の運動制御」が可能です。これがアト秒電子線パルスと呼ばれるものであり、さらに新たなプローブ法が生まれることになります。そして、このアト秒電子線パルスをご専門としているのが,今回講師にお呼びする森本先生です。

アト秒を専門とする研究者は世界でも有数であるため,今回の講義は大変貴重な機会となり,私自身も大変楽しみであります。電子の動きを可視化する世界最短のアト秒の世界を見に行きませんか。奮ってのご参加をお待ちしております。