第四分科会

写真提供:岡崎 

タイトル

ポラリトン化学の最前線


 紹介文



光と物質が強く相互作用する場合にはポラリトン状態と呼ばれる光―物質混成状態を取る。量子重ね合わせ状態であるポラリトン状態においては光の有する量子性が分子物性に付与されることが期待できる。近年では共振器における化学は「ポラリトン化学」として認識されつつあり、化学反応変調、エネルギー移動に加えて分子物性の多くの変換が報告されている。ポラリトン化学においては外部から光子を入射しなくても、電磁場の量子零点ゆらぎに由来する真空場によっても量子重ね合わせが担保されている。そのため光のいらない光化学とも呼称され、近年多くの議論がなされている。


 本講義ではポラリトン化学における課題を理解するために必要な前提知識を概説したうえ、講演者がなぜそのような研究のアプローチを取るのかという点に関しても基礎と応用を述べたうえで、ポラリトン化学の最前線に関して僭越ながら紹介したい。


講義内容(予定)


1. ポラリトンとは? (歴史的概説)

2. 量子光学に関して (量子力学との類似性など、他の分野との関連)

3. 分子、共振場の光物性(Fabry-Perot共振器とプラズモンを例にとって)

4. ポラリトン状態の結合強度 (弱結合、強結合、超強結合、深強結合)

5. 絶対反応速度論 (Eyringの絶対反応速度論を紹介し、議論する)

6. ポラリトン化学における理論 (反応速度論と熱力学変調に関して議論する)

7. ポラリトン化学の実験例

8. ポラリトン化学における電気化学の可能性


第四分科会担当者コメント
担当:安村 洋輝京都大学 )

第四分科会では北海道大学の福島知宏先生を講師としてお招きします。福島先生は、光と物質が強く相互作用して「結合」した強結合状態、すなわちポラリトンを化学反応に応用し、元の物質では見られなかった新たな化学反応性に関する研究をされています。

ポラリトンは、励起子と光子が量子力学的に混成した状態であるため、励起子及び光子の両方の性質を兼ね備えています。例えば、光子との結合度合いを変化させることで、ポラリトン形成による励起状態の伝搬速度を変化させることができます。また、粒子間の相互作用も可能であり、ポラリトンはボーズ-アインシュタインタイン凝縮を比較的起こしやすい準粒子でもあります。近年では、ポラリトンによる分子の電子励起状態ダイナミクスの変調に関する研究も精力的に行われており、これからどんどん発展していくことが予想されます。

ポラリトンに関する研究をされている方のみならず、量子光学に触れてみたい方や強結合と化学反応の関係について興味を持たれた方など、多くの方の参加をお持ちしています。