第五分科会

写真提供:岡崎 

タイトル

非線形光学効果を用いると何ができるのか?ー高調波発生からテラヘルツ STM までー


 紹介文

超短パルスレーザー技術の出現により、瞬間的に非常に高い強度を持つ光を発生させることができるようになり、物質の本質である様々な非線形応答が観測できるようになってきました。一方で非線形効果は極めて多様であり、それらを理解するためには光と物質の相互作用をどのように取り扱い、その結果どのような現象が現れるかを整理し、理解する必要があります。本講義では、光の基本的な方程式であるマックスウェル方程式と、物質を表す様々な方程式に立ち返り、それらを用いて物質の光応答を記述する方法論を学びます。特に光と物質の相互作用を扱う際にどのような近似が行われているかや、物質対称性が応答にもたらす影響などを中心に解説し、摂動論の範囲から非摂動論的な光学応答まで実例を交えつつ解説したいと考えています。分子科学を追究する上でも、レーザーを用いた様々な分光手法は重要なツールとなっていますが、その基礎が理解できるようになることを目指します。また、テラヘルツ時間領域分光法、シングルショット分光法、テラヘルツ走査トンネル顕微鏡などの最新の研究についての実例を交えて解説できればと考えています。

講義概要(予定)

1.電気双極子近似と物質中のマックスウェル方程式

2.線形分極の古典的モデル 

3.線形感受率と量子論的モデル

4.線形分光法

5.非線形分極と対称性

6.位相整合条件と波長変換

7.テラヘルツ時間領域分光法の基礎と応用

8.高次の非線形性と非線形感受率

9.非線型感受率と摂動論

10.非摂動論とシングルショット分光法

11.光電場駆動現象

12.光電場駆動現象の応用 ~THz-STM を例として~

分科会担当者コメント

担当: 木下 絵里加(京都大学

第五分科会は横浜国立大学の片山郁文先生を講師にお招きします。片山先生は、超短パルスレーザーを用いた新しい分光法を開発し、それらを用いて物質の物性を研究されています。 

超短パルスレーザーを用いた分光法は、分子の構造や固体の物性を観測するための非常に強力な測定手法となっています。レーザーのような強い光を物質に入射すると、屈折率が光強度に依存して変化したり、入射光と異なる周波数の光が生じたりするなど、弱い光では起こらない非線形光学現象が起こります。この現象は様々な分光法に応用されているため、非線形光学効果を学ぶことで、実験で使用される光学系に対する理解が深まることが期待されます。

本分科会では、非線形光学効果の基礎から、その応用例まで幅広く講義していただきます。応用例としては、物質の低周波応答に関する情報を得る「テラヘルツ時間領域分光法」、時々刻々と変化する光反応を1ショットで計測する「シングルショット分光法」、高い時空間分解能で分子の状態を捉える「テラヘルツSTM」など、最先端の研究に使用されている分光法についてもご紹介していただきます。

非線形光学効果を基礎から学びたい方、近年の研究に使われている測定手法が知りたい方など、幅広い層からのご参加を歓迎します。皆様にお会いできることを楽しみにしています!